はいうまでもない。ことに、彼が鉄拳制裁問題で闘って以来、彼の下級生からうけた信望は大したものであった。それがやがて五年生の大部分にも反映して、朝倉先生が心配したように、彼らが二派にわかれて争うというようなことにもならないですんだ。こうして彼の存在が生徒たちの眼に大きく映るにつれて、白鳥会員全体が、何か犯しがたい力をもっているもののように思われて釆たのである。
 次郎の心境も、この一年あまりの間に、たしかにいくらかの進歩を見せた。周囲の思わくにこだわるくせからは、まだすっかりぬけ切ってはいなかったが、こだわったあとで、それを取り繕ったりするような二重のこだわりは、よほど少くなっていた。それだけに、彼自身の気持もいくらか軽くなり、周囲の人々も、彼が次第に快活になって行くのを喜んだ。
「本田も、このごろ、いくらかすべりがよくなったようだね。しかし、上滑りは禁物だ。」
 朝倉先生は、白鳥会の集まりの時に、一度そんな事を彼に言った。――白鳥会では、恭一がまだ在校していたころは、恭一を「本田」と呼び、次郎を「次郎君」と呼ぶならわしだったが、恭一の卒業後は、いつとはなしに次郎が「本田」と呼ばれるよう
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