鳥会の一員となってからの内面的闘争には、涙ぐましいものがあった。「円を描いて円を消す」――「白鳥芦花に入る」「無計画の計画」――「誠」――そうした言葉は、会の集まりの席ではむろんのこと、家庭でも、学校でも、そのほかどんは場所ででも、彼の心を往復した。彼の一言一行は、そうした言葉のどれかを思い起すことによって、用心ぶかく選まれ、そして省みられたといっても、言いすぎではなかったのである。しかも、それで彼の言動の自然さがいくらかでも取りもどせたかというと、決してそうではなかった。それどころか、それらの言葉がいつも彼の頭にこびりついていることが、却って彼の心を束縛し、彼の言動の自然さをぶちこわすことにさえなるのだった。彼は作為すまいとする作為によって、手も足も出ないことがあった。それは、彼にとって大きな矛盾《むじゅん》であったにちがいない。しかし、彼自身では、少しもその矛盾には気がついていなかったのである。
 だが、彼がこの矛盾に気がつかなかったということは、彼の前途にとって、必ずしも不幸なことではなかったであろう。というのは、円を消すには先ず円を描かなければならないし、無計画の計画は、計画を
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