っている。しかし、世間普通のそうした団体のように、正面切って改革を叫んだり、集団行動に出たりするようなことはほとんどない。団員は、月に何回となく集まって、意見を出しあい、議をねり、計画を定め、その実現を誓いあうが、それをその団体の決議だなどといって、大ぴらに発表したりすることは決してない。彼らは、それがめいめいに出来ることだったら、默って率先躬行するし、村全体でやらなければならないことだったら、めいめい自分の近しい人から、茶飲み話の間に角立てないで説き伏せて行く。そんなふうで、いつの間にやら、村の気風を改め、世論を指導して行くので、大ていの人は、そんな団体の存在をはっきり知らないし、知っても気にとめない。いわば村の地下水となって村民の生活の根をうるおしているようなものだ。こういうのが、ほんとうの意味で公共に仕える道ではないか。――
 次郎も、話がそこまで進むと、「白鳥芦花に入る」が、何だかぼんやりわかって来たような気がした。
「それにくらべると――」
 と、先生は、ちらと大沢を見た眼を次郎の方に転じながら、
「大沢のやりかたには、やはり足りないところがある。むろん、自分を売るといったよ
前へ 次へ
全243ページ中111ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング