いではないかね。」
「はあ――」
 大沢は少しも面白そうな顔をしていない。
「君も、どうなり、五年生相当な円を描くことは出来るようになったらしいが、まだその円を消すところまでは行っていないようだね。」
「はあ――」
 大沢は、また「はあ」と答えた。今度は、しかし、何か思いあたるところがあるといったような返事の仕方だった。朝倉先生は、たたみかけて、
「君が、大の字なりに寝転んで、たんかを切ったところなんか、まるで円の上を三角で上塗りしたようなものだったね。それじゃ、せっかくの円も台なしだよ。」
「すみません。」
 大沢は、その大きな肩をすぼめて、右手で後頭部をおさえた。
 次郎は、さっきから、二人の対話に一心に耳を傾けていたが、大沢がすっかり弱りきっているのが、ふしぎでならなかった。彼は七つ八つの子供のころ、「饅頭虎」と「指無し権《ごん》」という二人のならず者が、酒の座で喧嘩をはじめ、父の俊亮がその仲裁にはいったときの光景を思い起していた。父は、その時、両肌をぬいで二人の間に割って入り、「それほど喧嘩がしたけりゃ、おれを片づけてからにせい。おれの眼玉の黒いうちはお互いに指一本ささせないぞ
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