して、父さんは僕を偉いって言ったんだい。」
「そりゃあ、あの時、坊ちゃんがあんまりおかわいそうでしたからですわ。」
「でも、恭ちゃんも、僕に負けたって言ったんじゃないか。」
「坊ちゃんは、どうしてそんなにお人よしにおなりでしょうね。恭さんだって、やっぱり坊ちゃんをかわいそうだと思って、取りなして下すったんですわ。」
「だって、乳母やも、あの時は喜んでいたんじゃないか。」
「喜んでなんかいませんわ。あたし、癪で癪でならないでいた時に、お父さんが、ああ言って、お祖母さんやお母さんの鼻をあかして下すったのが、ありがたかっただけなんですわ。……坊ちゃんは、何てじれったいお気持でしょうね。」
 お浜は、そう言ってため息をついた。
 次郎は、自分とお浜との気持のへだたりが、あまりにも大きいのに驚いた。
(いつの間に、二人はこんなにちがって来たのだろう。以前は、乳母やの気持と自分の気持とがべつべつであったことなど、一度もなかったのに。)
 彼はそう思わないではおれなかった。そして、はっきりとではないが、母が亡くなった頃のこと、入学試験にしくじったあとのこと、いよいよ中学にはいってからのこと、と、つぎ
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