「あたりまえって言えば、あたりまえですけれど……」
 と、お浜は、そのあとをどう言ったら、自分の言いたいことが言えるのか、ちょっとまごついたらしかったが、急に調子をかえて、
「あたし、ねえ、坊ちゃん、きょうお伺いして、ほんとうは、がっかりしていますのよ。」
「どうして?」
 次郎は、不安な気がしながらも、そう問いかえさないわけにいかなかった。
「どうしてって、あたしは坊ちゃんの乳母やでしょう。それがきょうしばらくぶりでお訪ねしたんじゃありませんか。そしたら、かりにも坊ちゃんのお母さんと言われる人なら、何とか、もう少しぐらい、しみじみと坊ちゃんのお話をして下さるのが、あたりまえですわ。」
「母さんは、ふだんから、あまり物を言わないんだよ。」
「そうかも知れませんが、それにしても、あんまりですよ。坊ちゃんが学校からお帰りになるまえだって、一言も坊ちゃんのことはおっしゃらなかったのですよ。お話しになるのは、お祖母さんばっかり。……ねえ、お鶴、そうだろう。」
「ええ、そうだわ。」
 お鶴は、いかにも不平らしく、強く合槌をうった。
「それに、お祖母さんのお話ったら、きいてて腹が立つことばかりなん
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