じも起らなかった。
雨天体操場までは、渡り廊下づたいで、かなり遠かった。次郎たちの組がついた時には、他の組の新入生たちは、もう、きちんとその中央にならばされていた。次郎たちは三つボタンの五年生の指揮で、その左側に四列縦隊にならんだが、トタン屋根をふいただけの、壁も何もない広々とした土間が、次郎には何か物凄く感じられた。
それまで、あちらこちらに散らばっていた五年生たちは、新入生の整列が終ったと見ると、急にそのまわりをぐるりと取りまいた。それは、ちょうど地曳網《じびきあみ》をおろしたといった恰好であった。
それが終ると、体操の指揮台のうえに、一人の五年生が現れた。三つボタンとはちがって、非常に品のいい、聡明そうな顔つきをしている。彼は、かくしから小さな紙片を取り出し、割合しずかな調子で演説をはじめた。
演説の内容は、次郎にはよくわからなかった。言葉の言いまわしが変にこみ入っている上に、まだ聞いたことのない漢語が多過ぎたのである。しかし、悪いことを言っているようには、ちっとも思えなかった。
「校風は愛と秩序によって保たれる。上級生は愛を以て下級生に接するから、下級生は秩序を重んじて
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