だけだった。
 徹太郎は笑いながら、
「眼で見たってわからんよ、心で見なくちゃあ。」
 すると恭一がすぐ、
「ああ、そうか。」
 と言って、次郎の顔を見た。次郎は、しかし、まだきょとんとしていた。
 それから、恭一と徹太郎との間に次の問答がはじまった。
「叔父さんは、子供の時分からあの松の木を見ていたんですか。」
「うむ、見ていたとも。」
「じゃあ、その時分から岩がどのくらい動いたか、わかってるんですね。」
「どのくらい? それはわからんよ。何しろ、見たところは、私の子供のころとちっとも変っていないからね。しかし、いくらか動いたことはたしかだろう。松の木が大きくなって行くんだからね。」
「昔は、あの岩は、一つにつながっていたんでしょうね。」
「むろん、そうだろう。松の木をぬきとって両方から押しよせてみたら、今でもぴったりくっつきそうじゃないか。」
「松の木って強いもんですね。」
「うむ強い。しかし強いのは松の木ばかりではないさ。命のあるものは、何だって強いんだ。草の根でも、それがはびこると石垣を崩すことがあるんだからね。」
「ほんとうだ。」
 と恭一はしばらく考えて、
「この松の木だっ
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