。俊亮と恭一とが、かわるがわる、「もうここいらが煮えているよ」と言って、肉や葱を彼の前に押しやってくれるので、彼はほとんど箸を休める必要がなかった。お祖母さんがどんな眼をして彼を見ていたかも、俊三が鍋のなかのものをとるのに、どんなふうにお芳に世話をやいてもらっていたかも、彼はまるで知らないでいるかのようであった。しかし、食慾が満たされるにつれ、そして、鋤焼というものの刺戟が、次第にその新鮮味を失ってくるにつれ、彼の注意も、そろそろと周囲の様子にひかれて行った。
「母さん、僕、豆腐はいやだい。」
「ああ、そう、じゃあそれ母さんの皿にうつしてちょうだい。もうじき肉が煮えるから、待っててね。」
 俊三とお芳との言葉が、ます次郎の耳を刺戟した。しかし、なお一層彼の注意をひいたのは俊亮と俊三とのつぎの対話だった。
「俊三、お前母さんに甘ったれてばかりいるね。」
「甘ったれてなんかいないよ。」
「だってそう見えるぞ。」
「馬鹿にしてらあ。」
「じゃあ、今夜は次郎が母さんのそばに寝るんだが、いいかね。」
「そんなの、ないよ。」
「どうして?」
「だって、恭ちゃんはお祖母さん、次郎ちゃんは父さん、僕は
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