急に以前の気持がしみ出て来るような気がした。そして、自分の方から何か口を利いてみたいと思ったが、急にはうまい言葉が見つからなかった。
 病室にはいると、お浜はお祖母さんには挨拶もしないで、いきなり病人の枕元《まくらもと》に坐った。やはり次郎の肩に手をかけたままだったので、次郎も一緒に坐らなければならなかった。彼女は坐ったきりうつむいてしまって一言も言わなかった。次郎は彼女の膝にぽたぽたと涙が落ちるのを見た。
「まあ、よく来てくれたね。」
 お祖母さんの方からそう挨拶されて、お浜は、急いで涙をはらいながら、笑顔を作った。そして、
「ほんとに申訳もないご無沙汰をいたしまして。……ご病気のことなど、ちっとも存じませんものですから。」
 二人の間には、それからしばらくいろいろのことが話された。お民もちょいちょいそれに口を出した。話は大ていお互いのその後のことについてであった。次郎はそれによって、弥作爺さんが死んだこと、お兼がもう奉公に出て、いくらかの金を貢《みつ》ぐこと、お鶴が学校で優等賞を貰ったことなどを知った。次郎は、古い校舎の片隅の校番室の様子を思い出しながら、それをきいた。本田の引越し
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