ってしまってから、はっとしたらしかった。
 いやな沈默がつづいた。庭では蝉がじいじい鳴いていた。
「恭一、――俊三、――」と、お民は次の間の方に顔を向けて二人を呼んだ。二人がやって来ると、力のない声で、
「お祖母さんがお帰りだから、今日はお前たち一緒にお帰り。またすぐ来ていいんだから。」
 そう言って彼女は眼をとじた。眉根にはかすかな皺がよっていた。
 本田のお祖母さんは、不機嫌な顔を強いて柔らげながら、丁寧に正木のお祖母さんに挨拶した。お民にも何かと親切そうな言葉をたてつづけに言った。そして二人の孫を促《うなが》して立ち上った。
 実をいうと、本田のお祖母さんは、恭一や俊三に病気をうつされるのが恐かったのである。それを体《てい》よくごまかそうとして、妙な羽目になったので、病室を出てからも、正木一家の人達に対して、よけいなあいそを言わなければならなかった。そんなわけで、彼女はいよいよ正木の家を辞するまでには、大方小半時もかかった。
 次郎は見おくっても出なかった。彼は畳の上にねそべって、母の青い顔を見つめていた。すると、母の眼尻から、彼の全く予期しなかったものが、ぼろぼろとこぼれ落ちた
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