日の朝、竜一は学校で次郎の顔を見ると、いかにも得意らしく言った。
「僕、休みになったら、すぐ東京見物に行くよ。次郎ちゃんは東京に行ったことある?」
 次郎は侮辱されたような気がして、ちょっと不愉快だった。しかし、怒る気にはなれなかった。それに好奇心も手伝って、もっと委しい話をきかないわけにはいかなかった。
「いいなあ。東京に親類があるんかい。」
「ううん。まだ親類はないんだけれど、すぐ親類が出来るんだい。」
 次郎にはわけがわからなかった。彼は竜一の顔を問いかえすように見たが、竜一はにやにや笑っているだけだった。
「誰がつれて行くんだい。」
 そうたずねた次郎の心には、もし竜一の父だと、その留守中、母の病気は誰が診《み》てくれるだろうか、というかすかな心配があった。
「大てい母さんだろうと思うけれど、はっきり決ってないや。僕は父さんの方がいいんだがなあ。」
「でも病人をほったらかしちゃいけないんだろう。」
「だから、父さんはどうしても行けないんだってさ。でも、姉ちゃんは、母さんがついて行く方が好きなんだよ。」
「姉ちゃんも行くんかい。」
 次郎は、薬局から当分春子の姿が消えるんだと思う
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