、謙蔵夫婦に相談して、表面その実子にして籍に入れて貰うことにしたのである。
謙蔵夫婦は、別に誠吉を愛しもせず、さればといって憎みもしなかった。一たいに二人共、自分たちの実子に対しても、こまかな心づかいなどしない方で、いつも商売や家庭の切盛《きりもり》にかまけている方だった。だから、あたりまえなら、誠吉は、他の子供たちにくらべて、そう不幸なはずもなく、謙蔵に対して変な気など起す理由は少しもなかったのである。
罪はむしろ母のお延にあった、彼女は、必要以上に自分の境遇にひけ目を感じていた。その結果、自分だけが遠慮深く振舞うだけでなく、誠吉にもそれを強いた。謙藏の目の届くところでは、ことにそれが甚しかった。台所の方のことは、大ていお延に任されていたが、彼女は誠吉を偏愛するとみんなに思われたくないところから、わざわざ誠吉の食物を他の子供たちよりも悪くしたり、何かの都合で、肴などが人数に足りないと、誠吉だけに我慢させたりした。また、誠吉が従兄弟たちと一緒に何かいたずらでもすると、叱られるのは、いつも誠吉だけだった。しかも彼は、しばしば謙蔵の前で謝罪を強いられるのだった。謙蔵は、そんな場合、深く
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