風呂敷包が出来あがる頃には、大てい、お民が足音を忍ばせるようにして、二階に上って来た。そしてその包みの中を一応あらためてから、きまって右手を襟につっこんで、軽い吐息をもらした。
「貴方、その品だけは、もっとあとになすったら、どう?」
 彼女は時おり、力のない声で、そんなことを言った。しかし、俊亮の答は、いつもきまっていた。
「晩《おそ》かれ早かれ、一度は始末するんだ。」
 次郎は、そんな時には、不思議に母に味方がしてみたくなった。そして、長持に突っこんだ顔を、そっと父の方にねじ向けるのだった。
 しかし、彼の視線《しせん》がまだ父の顔に届かないうちに、それを途中でさえぎるのは、母の鋭い声だった。
「次郎、もういいから、お前は階下《した》に行っといで。」
 そう言われると、次郎の母に味方したいと思った感情は、一時にけし飛んだ。同時に、長持の中の品物なんかどうだっていい、という気になった。そして、あとに残るのは、父に対する親しみの感情だった。
 だが、こうした秘密な売立《うりたて》も、そう永くは続かなかった。
 ある日次郎は、父が小用か何かに立ったあと、一人で長持の前に坐って、長い刀を、お
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