ましたの。」
「うむ。」
「そしたら急にそわそわし出したものですから、そこをうまく畳みかけてきいてみたんですの。」
お民は、少しうわずった調子で、得意そうに言った。
「なるほど。……うむ。……」
俊亮はしきりに考えているらしかった。しばらく沈默がつづいたあとで、お民が言った。
「ですから、本気で教えてやりさえすれば、いくらかは違ってくると思いますけれど……」
「そうかね。……それで、あいつまだ小屋の中にいるのかい。」
「ええ、いるだろうと思いますけれど……」
「とにかくおれが行ってみる。」
俊亮の影法師《かけぼうし》が動いた。
次郎は、父に後《おく》れないように、急いで薪小屋にもどって、じっと息をこらしていた。
「次郎、馬鹿な真似はよせ。」
俊亮は小屋に這入ると、いきなり提灯を彼の前にさしつけて、そう言ったが、その声は叱っているようには思えなかった。
「算盤のこわれたのは、どうだっていい。お祖父さんには父さんからあやまっとくから。……だが、こわしたと言ったり、こわさないと言ったりするのは卑怯だぞ。」
次郎は、父に卑怯だと思われたくなかった。卑怯だと思われないためには、やはり
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