と彼は思った。
お民――「校番室なんかで、お鶴と遊ばしたりするからいけないんだよ。」
俊亮――「とにかく、もうすんだことだ。」
お民――「でも庄八は、こちらから相当の挨拶をしなければ、今夜にも自分で出かけて来るとか言ってるそうです。」
俊亮――「来たっていいじゃないか。向こうからも一応は挨拶に来るのが当然だからね。」
お民――「でもそれじゃ、事が面倒ですわ。」
俊亮――「なあに、何でもないよ。俺がよく話してやる。」
お浜――「そりゃ旦那様におっしゃっていただけば、庄さんも納得するとは思いますが、何しろあれほどの傷ですし、やはり坊ちゃんのためには、一応はさっぱりなすった方が……」
俊亮――「次郎のためを思うから、俺はそんなことをしたくないんだ。お前たちは、相手の傷のことばかり気にしているが、次郎としては、命がけでやった反抗なんだ。自分よりも強い無法者に対しては、あれより外に手はなかろうじゃないか。あいつの折角の正しい勇気を、金まで出して、台なしにする必要が何処にあるんだ。」
 俊亮の語気は、いつもに似ず熱していた。次郎には、その意味がよく呑みこめなかった。しかし、自分のしたことを父が悪く
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