居する婦人とは衣裳を與へて同棲せしむる婦人であり、第五の水得婦と云ふは、水瓶に手を觸れて、同棲せしむる婦人であり、第六の鐶を卸した婦と云ふは、婦人が頭に物を載せて運搬する際、据はりのよい樣に丸い枕のやうなものを髮上に戴く、(京都の近郷の八瀬大原の婦人などは藁で作つた鐶を戴いて居る)これを頭から卸さして、勞働をやめさせ、己が家に同棲せしむるからかく云つたもので、第七は婢であつて同時に婦としたもので、第八は家事を辨ずる女で、同時に婦となつたもの、第九は、旗鼓を樹てゝ戰陣の間に敵の婦女を囚へてつれ歸り、己の妻にしたもの、第十は暫時の間、夫婦關係を結んだもので、今日の言葉で云へば、自由結婚で嫌になれば、すぐ離れてもかまはないと云ふやうなものである、かく精細に婦の種類を列擧したのを見ると佛教の戒律の注釋せられた當時に印度の社會が認めて正當の妻であるとしたものは、ざつと七種乃至十種あつたもので、日本の今日に於て、法律上、妻といふものに比すれば甚だ其範圍は廣い、察するに、此等の戒律の注疏をした人々は自分達が法律家であつたか、然らざれば、當時の法律家の間に用ゐられた專門語を使用したものと思はれる、一讀
前へ 次へ
全54ページ中50ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
榊 亮三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング