で短縮することができたのだ。
つまり、第一列目が射つ。次に第二列目が射つ。次に第三列目が射つ。その時までに第一列目のタマごめが完了する。かくて彼の鉄砲はつづいて何発も射つことが可能となった。
この鉄砲戦術も後日信長が借用してわがものとする。信長はさらに改良を加え、野戦に特殊な鉄砲陣地を構築する。ザンゴーを掘り、竹矢来をかまえ、その内側に三段の鉄砲組を構えるのだ。騎兵の突入を防ぐには、ただの三段の鉄砲陣では防ぎきれないからだ。そこで信長の鉄砲組は、鉄砲のほかに竹矢来用の竹と穴掘り道具を持って出陣する。この戦法は信長が完成したが、元祖は一文銭の油売りであった。
★
一文銭の油売りは多額の金ができたので、そろそろサムライになってもよいころだと考えた。
サムライになるにも、なり方がある。いかに乱世でも出世のツルが諸方にころがっているわけではない。
諸国を廻游した結論として、手ヅルがなければロクな仕官ができないことを知った。そして、美濃の国では南陽房の舎兄がよい顔であることを知った。
彼は常在寺に昔の南陽房を訪ねた。
「オレはサムライになりたいと思うが、今の武
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