たことをしたがる義龍という存在だろう。トドのつまりは、そうらしい。
 つまり道三にとっては、義龍という存在が、どうやら心理的に殺すことができない存在なのかも知れない。信長という対立的なものを選んで味方にしたところを見ると、自分でもそんな気がするのであった。何か宿命的なものが感じられた。
 そして、義龍を殺すことよりも、義龍に殺されるかも知れないということをより多く考えるようであった。いつでも義龍を殺せるうちから、すでにそうだった。
 むろん、義龍に殺されるのが心配で、対立的な信長を味方にしたわけではないのである。しかし、今になって、結果から見ると、まるでその予算を立てて信長を濃姫の聟に定めたようなことになっている。あるいは、そういう秘密の気持があったのに、自分ではそれに気付かなかったのかも知れないと考えたりするのであった。
 それはまったくフシギな心だ。なぜなら、今だって義龍を殺すことができないわけではないじゃないか。
「どうも、まったく、目ざわり千万な奴だ。六尺五寸もあって、モッタイぶって、バカで、ライ病だ」
 しかし、すべてが、オックウだ。六尺五寸のライ病殿に関する限り、すべてがオ
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