なひどくけだるい快感を与へた。この醜怪な、驕慢な孔雀の羽を頭につけた鶏のやうな女王であつた。その鶏をあぶり肉にしたやうな食慾をそそる肉感だつた。様子の違つた驕慢のために、はじめて花をひらいたやうな肉体であり、その花を無残にむしり、踏みちぎるのがこよない愉悦を彼に予約してくれる。舌なめずりといふ言葉が、この宴席をまつ心にいちばん美しく当てはまる。自分がタツノを引取つたことも、他意ない純情で応じたことも、すべて自ら心付かざるカラクリであつて、驕慢の花を咲かせるために計算された微妙な過程であつたやうな、ひどくいい気な思ひさへした。
安川の疲れた頭に驕慢の花がこびりつき、彼は夜がねむれなかつた。けはしかつた表情が急にだらけて、ふやけたやうに纏まりがなく、厚顔無恥のあくどさや八十親爺の猥褻がありあり刻まれてゐないかと、彼は顔を見られることがひどく気懸りになりだした。
ある日盛りのことであつた。安川が二階の書斎へ本をとりに入らうとすると、タツノがそこに昼寝してゐた。××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
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