日暮しの身分で妹をやくざな働きにだしてゐる有様であつてはそれも夢のやうなことで、せめて旦那のために八重が質に入れた自分の持物を受け出す金額だけでも融通していただけたらとかう思うてゐるのですが――」
「私はさうぢやない。着物も指環もいらないけど……」と、女は羞ぢらう気色で横手を向きながら小さく呟いた。
「私のやうな者でも置いて下さるなら、どんな苦労をしてもいいし、裸で暮らしてもくやまない。旦那に殴られても蹴られても殺されてもかまはない」
 暫くのうち男は無言で、うつむいたなり別に表情の変化も見受けることができなかつたが、突然顔付を歪め泣顔に変り恨むやうに妹を偸《ぬす》み見た。
「あれほど呉々《くれぐれ》も言つたではないか。お前もよく納得したことではないか。今更そんなことを言つてどうなるものか。第一旦那とは身分も違ふし、それに旦那はどういふ巧いことを言つてゐたか知れないが(かう言ひながら男はチラと私に視線を送り、その瞬間は口を噤んだが、顔を伏せて、もはや泣言か口説のやうにしめつぽく綿々と言ひはじめた)旦那衆は女遊びに馴れてゐるから儂《わし》ら土百姓と違つて女を喜ばせる手管も巧いしよ、あげく
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