だつたのだ。人間は利他的なることの満足に確信はもてないけれど、それは利己的なることの確信ある満足を意味しない。さらに利己的を持ちだすまでのことはなく、問題はそれ以前の損得の先にあるのだ。即ち人間は死によつて生きることの根柢から存在それ自らが不安と同意語に他ならなかつた。建設? 鸚鵡返しにその反駁のでることは無論言ふまでもないことだ。然し建設そのことが即ちまづ不安からの出発ではないか。――非算数的な値打に対する打算の不安は、要するに生が死に対しての打算の不安に他ならぬのだ。……
恐らく諸君は笑ひだす。おや/\思ひもよらぬ奇妙なところで又死の奴が現れた、と。まるで薬籠から家伝の秘薬をとりだすやうに、急場を救ふにこれは又何にも増して都合のいい万病丸に違ひない、と。
さういふ諸君は、然し死に就て考へるたびに、何か生きることは様子の違つた別物のやうに奇妙な考へ違ひをしてゐるに相違ないのだ。死とは何ぞや? 幽明境を異にしたあちらのことか? 冗談ぢやない! 死は生きることの他のところを探したつてありやしない。見給へ、生きてゐる自らの相を! 生きてゐることを! 生きてゐること、それが即ち直ちに死な
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