。もと/\僕は世間並みの幸福には徹底的に魅力を感じてゐないのです。これは強がりではありません。僕は断言できるのです。僕はワイフのカツレツが特に清潔だとすら思はないのです。一応の聡明さで、ワイフのカツレツが清潔だといふ中途半端な誤魔化し方をしただけでも芥川龍之介の錯乱を認めることができないのです。秋子さんの愛に就いて僕には全く自信がありません。余計なことかも知れませんが、あの人のほかに、僕には現に二人の情婦があるのです」
木曾野は真剣な顔付をしたが、そのどこやらに然し親しさが流れてゐた。
「いいぢやありませんか、そんなこと。秋子さんの今後の生活に責任を持つていただきたいなんて、あたし望んでもゐませんし、その心算でお話きいていただいたわけでもありませんわ。秋子さんがよしんば百人の情婦の中の一人だつて、それでいいぢやありませんか。とにかく静浦の別荘へ秋子さんをお預りすることだけは承諾してくださるんでせうね? これは現在の話ですわ。未来のことなんて考へてみたくもありませんもの」
「さういふ意味でしたら勿論不賛成を説《とな》へる筋はないわけです。然し、ちよつと、待つてください……」
私は何事
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