露の答
ぬばたまのなにかと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを
坂口安吾
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その一
加茂五郎兵衛の加茂は古い姓です。加茂の地名や賀茂神社など諸国に見られ、之は上古に於ける加茂族の分布を示すもので、神代の頃加茂族なる一部族があり、後世諸国に分散定住し祖神を祀って賀茂神社と称した。この部族の生業は鍛冶ではなかったか、ということが今日一部の民族学者によって言われておりますが、加茂族だの諏訪族、三輪族など、之等は先ず国神系統の代表的な氏族でしょうが、その他何々、新撰姓氏録に数百の姓氏が記載せられて古い起源を示しているのは衆知のことです。ところで、加茂五郎兵衛という人物は実際は加茂五郎兵衛という姓名ではありません。
明治大正の頃は知る人もあったでしょうが、今日となっては変名の必要もないかも知れぬ。けれども一時はともかく若干政界に名前の通った人物であり、
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