傲慢な眼
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)吃驚《びっくり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もぢ/\
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(一)
ある辺鄙な県庁所在地へ、極めて都会的な精神的若さを持つた県知事が赴任してきた。万事が派手であつたので、町の人々を吃驚《びっくり》させたが、間もなく夏休みが来て、東京の学校へ置き残した美くしい一人娘が此の町へ来ると、人々は初めて県知事の偉さを納得した。
一夕町に祭礼があつて、令嬢は夜宮の賑ひを見物に出掛けた。祭の灯に薄ら赤く照らされた雑踏の中で、自分に注がれた多くの眼が令嬢を満足させたが、最後に我慢の出来ない傲岸な眼を発見した。その眼は憧れや羨望や或ひはそれらを裏打した下手な冷笑を装ふものでもなく、一途な傲岸さで焼きつくやうに彼女の顔を睨んでゐた。令嬢は突嗟にその眼を睨み返したが、すると、彼女
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