ということは、ケダモノよりもあさましいものに見うけられました。しかし日野はそれに目をおおうようなことはしませんでした。むしろいつもの倍も目玉をむいて、ジロジロと観察にふけっていたのです。八千代サンが目の前でハダカにされてセラダに犯されたにしても日野の目玉はマバタキしなかったに相違ありません。
 女というものはどうしてこう愚劣なんだろうかと日野はガイタンいたしました。男がこういう愚劣なものに凝らねばならぬ宿命を与えられているということは歎かわしい次第だ。この女の獣的異変と退化性と肉慾性とは平和な時代の道徳と相いれないものがある。侵略の兵隊の女狩りが彼女らの本性にふさわしいもので、兵隊にジュウリンされ隷属する性質のものだ。紳士に隷属すべからざるものなのである。
 してみると男の本性も紳士にあるのでなくて兵隊にあるのかも知れず、世界秩序の本態も平和にあるのでなくて戦争にあるのかも知れん、と日野は考えてしまったほどです。彼がこう考えたのも、フシギに自ら反省する頭を失わなかったからで、なぜなら彼は八千代サンの愚劣きわまる獣的異変と色情狂的酔態を見まもっている間中、彼自身の性器が完全にボッキしたま
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