ことがありがちで変テコなことを思いつくのはフシギではないかも知れないが、しかし、あんまり、ひどすぎるぜ。なア、八千代サン。あなた、ヒロポンやめなよ」
「ひどいわね。ヒロポン中毒あつかいして。思うことを云うのが病気でしょうか」
「ま、病気といえば、病気だな。タシナミというものがある。かりにもあなたのような娘が処女を自由にしてなんてことを云うのは自然にそなわる女のタシナミに反するものだぜ。私は小学校をでたばかりの無学者でむつかしいことは知らないが、ちょッと、ひどすぎると思うねえ」
「そうねえ。ひどすぎたかも知れないわ。私、愛情の表現を知らないのです。仕方がないから、手ッ取りばやく、処女を自由にしてなんて云ったんですけど、私だって肉体のことなんか考えていないわ。ただ本当に好きなんです。トオサンの目も手も口も心も、みんないとしくて、たまらないわ。毎日、まるで格闘しているような気持なんです。それを云いたかっただけなの」
「若い時には魔がさすことがあるものだ。気まぐれというわけでもなかろうが、ひょッと変テコな入道雲みたいのものがニジかなんかに見えやがってさ。若い男がおッ母さんのような女に変な気持に
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