もんでは、オレが又困ることになるもんだ。ンナの恥にならねように、今日は病気らと云うてやるが、ンナの返事は、どうら」
「ほう。勝ちゃア、オレにも十両くれるか」
「オヤ。ンナは貰らう気らか」
「くれるんだろう」
「いッち勝てば呉れてやるろも、負けた野郎にはなンにも呉れてやらねがんだぞ」
「もらおうじゃないか」
「オヤ。ンナがいッち勝たねばダメらて」
「馬鹿野郎め。オレが勝つにきまッてるじゃないか。十両なら悪くねえ」
「貰われれば悪くねえにきまっているわ。くらすけられて目をまわしても文句を云うことは出来ねがんだぞ」
「そいつは四人の野郎どもによく云いきかしておいてくれ。恨まれちゃアいけねえや。オレは至って気立のやさしい男だからな」
無論一同の企みであるということは一目で分っている。しかし、何食わぬ顔。
果して計略うまく行くかと気をもんでいた一同は喜んだ。アンニャの総代は鼻介に向って、
「こう云うてはンナに気の毒らが、いッち弱いがんから片附いてもろうがんが都合がよかろて。ンナがいッち先らな。これはどうも仕方がねわ。さて、あとの四人はクジびきが良かろか」
クジをひくと、飛作、海坊主、米屋の
前へ
次へ
全26ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング