った。気質の遺伝というものは解しがたいフシがある。オカカはウッカリ言いまちがえて、ガマが蛇をのんだがネ、と言ってしまった時には、自説のマチガイを百も承知の上で一歩もひかずに主張したあげく、各々の手にガマと蛇をつかんできて、ガマの口をこじあけて蛇をねじこんでみせて満足するというヤリ方であった。剛情では村の誰にもヒケをとらないオカカである。
 けれどもアネサの敵ではない。剛情は論争に類するけれども、アネサは全然無口である。そして論争を好んだ報いによって、オカカは四ツにたたまれたり、横ッチョへ片づけられたりするだけだった。そこでオカカは年百年中音をあげているのであるが、誰も同情しない。アネサの怪力を見こんでヨメにもらったのはオカカだからである。キンカの野郎はションボリうなだれて、それだけはカンベンしてくれるとたぶん嬉しく思うだろうと思うというような意味の心情をヒレキしたつもりであったし、その哀れな有様を見ては馬吉も多少同感して、倅のアネサがただの人間の女であっても必ずしも悪くもないように思われる気もしないでもないらしいように思うというようなことを言いかけてみたりした。しかしオカカは馬や牛の代
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