たもんだ。ミコサマの目は良う睨んだもんだわ。オッカネ。オッカネ」
「本気に、オッカネなア。それに、オソメは綺麗だてば」
 村の人々はそう云って賞讃した。クマが甚しく心外であったのは言うまでもない。
 オソメが病気になって死んでしまえばいいと思っていたのに、馬にも蹴られずに無事に育って、次のミコサマはなんてまア美しくて品があるのだろうと評判が良くなるばかりであった。そして天狗のアンニャの元服の時にヨメの式もあげて、晴れてミコサマの跡をつぐことになった。クマときては、それから五年たってもヨメに所望する者がない。クマはそれを天意と見た。つまり近々オソメが死んで、自分が改めてミコサマに選ばれるための天のハイザイであろうと見ていたのである。
 あにはからんや、オソメは死なずに、キンカの野郎のオカカからヨメの口の所望がきた。ツラツラ思えばヨメの所望をうけるのはマンザラではないから、してみると、もう結婚してもいいという天のハイザイであろう、神様の思想が変ることもあるものだ、と、クマはよろこんでキンカの野郎のヨメになった。
 しかし馬吉の一家のアクセク働くこと。オカカは朝ッパラからラッパのようにブウブ
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