を唄つて引きあげよう。いざ、嵐よ吹け。獅子よ吠えよ。戦へ、戦へ」
 中介は起き上つて、再び台所へフラ/\と戻つて行つた。羽目板にもたれた信助はすでにウツラ/\としてゐる。中介は右手の瓶と左手の目盛のコップをとりあげた。信助は薄目をひらいて中介を見たが、すぐ目をとぢて再び眠りはじめてゐる。
 三平は歌を唄ひ、中介は目盛のコップにアルコールを注いで、各々勝手な方角へ暗闇の底へ消えてしまつた。



底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
   1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「新女苑 第一〇卷第三号」
   1946(昭和21)年3月1日発行
初出:「新女苑 第一〇卷第三号」
   1946(昭和21)年3月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2006年11月8日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さん
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