の暗澹たる雪空の裏側に住なれてゐたのであらう。故郷を逃げたのではなく、実は郷愁のすみか[#「すみか」に傍点]をもとめて、避けがたい力によつて馬車を走らせてゐたのかも知れない。
タマーラ・カルサビイナのピカソにおける如く、私も屡々《しばしば》私の知人の南国人達に、表現の形式に差はあつても、同じ真実を見出しがちだ。
人間は気候に負けてゐる。我々の理知の言葉と、我々の気候の言葉は同じ程度に強いらしい。我々の本能が気候と関聯する限り、我々の理知はまた郷愁と関聯せざるを得ないであらう。
底本:「坂口安吾全集 02」筑摩書房
1999(平成11)年4月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潟新聞 第二〇〇一五号〈夕刊〉」
1937(昭和12)年1月14日付(13日発行)
初出:「新潟新聞 第二〇〇一五号〈夕刊〉」
1937(昭和12)年1月14日付(13日発行)
入力:tatsuki
校正:今井忠夫
2005年12月10日作成
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