部分のマゼ合わせが同じくて、またマンナカの部分が欠けているのが対照的でそこに何かがあるんじゃないかと思われたせいですね。日記にはそれが正直に情熱的に語られてますね。あなたはこうも見ていますよ。バラバラにしたくせに、二ツ一しょに包むなんて筋道の立たないことをするものだ。そこにワケがありそうだ……」
 新十郎は顔をあげて、いかにもうれしげに楠に笑みかけ、同じ文句をくりかえした。
「バラバラにしたくせに、二ツ一しょに包むなんて筋道が立たないことをするものだ。そこにワケが……ねえ、楠さん。あなたはスバラシイことに気がついたのですよ。ですが、なぜそのワケをもっと追求しなかったのですか」
 楠は恥じて赤面して仕方なしに答えた。
「三ツ目の包みから、左右のマゼ合わせもなく、またマンナカの欠けてる一致も存在してやしなかったからです。早合点で、軽率すぎました」
「そう。左右対照とマンナカの欠けてる一致という点についてだけは、たしかに早合点で、軽率でした。ですが、早合点と判明したのはその二ツだけですよ。バラバラにしながら二ツ合わせて、一包みにするなんて筋道が立たないから、そこにワケがありそうだ、という疑い
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