用としては不用品。三年前に自宅から追ッ払って吉原の近くに三百代言の店をもたせてやった。そして代りに能文を末娘と結婚させて自宅へ入れて番頭とした。京子と能文は従兄妹同士の夫婦。しかし鬼はコセコセとした血の問題はとりあげない。
 次男の石松は勘当された長男同様ちかごろ酒と女に身をもちくずし、跡目相続をカタにして諸方に借金があるらしい様子。兄と云い弟と云い、鬼のタネからはロクな男が生れない。石松は二十六だ。
 主人平作もいれてタケノコメシに集る血族十二名。折ヅメの十四ひく十二は二。
「すると坊さんはお二人ですな」
「そんなムダなことはオレが大反対だ。お布施とタケノコメシはオレが一人で充分に間に合う」
「折ヅメは十四本。一本あまりますが」
「それはホトケにあげる。一同がタケノコメシをパクついてる時は仏前にも折ヅメとタケノコメシを飾っておくが、パクついてしまうと仏前から下げて、あとは誰の腹へおさまるのかオレは知らんが、これは坊主のオレに持たせて帰すのがホトケの道にかなってるなア」
「折ヅメもその場でパクつきますか」
「これは一同そッくり持って帰るな。オレもそッくり持って帰る。折ヅメの分量だけタケ
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