戻ったでしょう。もっとも当日のハマ子はウロウロと面白そうに諸方の部屋々々の騒ぎを見物に歩き廻ってはいましたが」
「奥の部屋まで見物にでかけるような特に変ったことはなかったのですね」
「私と周信さんとが奥の部屋へ姿を消したのに気がついて、それを見物に近づいたのかも知れません。また兄さんも私たちの立聞きが目的かも知れませんね。小心で何もできないお坊ッちゃんに見え、またそのようなフリをして見せることが本能のような兄ですが、実は立聞きだの、隠し物だのと、人の目を盗むことにかけてはとても素ばしこくて天才的な術にめぐまれているのです。その早業を見破られて後の処置にも天分があって無限にそらとぼけて、ただなんとなく顔をあからめて世なれない坊ちゃんらしくゴマカシおおす手法なんぞ、みんな生れつきの本性なんです」
「あなたは日記をつけていますか」
「いいえ。つけたことがありません。ですが特に変った出来事の日附でしたら、日記につけずに頭に記憶しておく程度の代用のハタラキは持ち合わせております」
「例えばこの半年に起った大変化のうちで、どのような出来事の日附を覚えていますか」
「たとえば、小沼家の方々が政子さん
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