る必要はないと思っていたのです。とにかく、殺人が夜間に起らなくてシアワセでした。私は見かけほど気が強くはないのです」
最後によびだされたのはオトメであった。その日人が死ぬことがなぜ分ったかという問いに、答えはカンタンであった。
「神様のお告げですよ。あの人が私の云うことをきいて、私をよんで、オイノリをあげて下さいと仰有れば、こんなことは起りません。神様がついております。神様が親切に教えて下さるものを、あの人がそれを素直にきいて私の言葉を信じないから、こうなります。自業自得ですよ」
「ドアの前や庭なぞでオイノリをあげたそうだが、きかなかったようですね」
「そうですとも。本人がその心掛けで、神様におすがりしようとしないから、きく筈はないじゃありませんか。私がいくらオイノリしたって、本人次第ですよ」
「最初に現場を発見した一人だということですが、そのとき何か直感したものはありませんか」
「いえ、もう、それはモロモロのことを直感しました。まず第一に、ああ気の毒な、自業自得、だから云わないことじゃない。そうでしょう。人間は常に家庭に気をつけなければいけません。ワザワイは塀の外からは来ませんよ。
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