は珍しい。クワだって普通は持主の焼判があるものだが、どの一ツにも持主の名がなかったそうだね。大人になるうちに、そんなことをふと考えるようになりましたよ」
 伊之吉は侘びしそうな苦笑をもらしたが、
「ガンドウの灯もチョウチンの灯もローソクの燃えきらぬうちに消えていました。別にひッくり返っちゃいなかったそうだ。すると、死んだオヤジではない人が消したことになるらしいね。人の噂ではオヤジは黄金を掘りに行ったそうだが、ガンドウとチョウチンを二ツも用意しているくせに掘りだした物を運ぶための品物の用意がないのはウカツじゃありませんか。黄金の箱を小脇にかかえてクワのほかにガンドウとチョウチンをぶら下げて戻るつもりかねえ。このへんのことは考えると妙ですよ」
「それじゃアお前さんはお父さんが何をしていたと考えるかね」
「そいつは分りませんや」
 と彼は吐きすてるように云って苦笑した。その他のことはハッキリと答えたがらぬ風で、次第に口数が少くなるばかりであった。
 別れぎわに新十郎は伊之吉にきいた。
「お前さんのウチの畑は遠いのかね」
「いいえ。ウチの隣りにちょッぴりしかありません。だからフシギでさア」
 
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