もなく悪血をとっていたが、
「なるほど。メクラがアンマの途中に中座して人を殺してきたのかい。石頭のメクラには、目をさましている目アキの心は分らないが、もまれてグッスリ寝こんだ人間の動勢は手にとるように心得があるという、大きに有りそうなことだ。石頭のアンマなんぞとバカにしてかかッちゃア、目アキがドジをふむことになる。道によって賢しさね。大そう勉強になりましたよ」
 虎之介は素直な海舟が気の毒になって、云った。
「あとで結城さんがひそかに語ったことですが、足利の仁助が根はり葉ほり部屋の燈りのことを訊いたのはメクラの犯行と狙いをつけての詮議だろうとのことでした。そこを詮議するというのも、奴めがオカネの虎の子を狙っていたせいであろうとの話でした」
「余計なことだ」
 海舟はつまらなそうに呟いた。



底本:「坂口安吾全集 10」筑摩書房
   1998(平成10)年11月20日初版第1刷発行
底本の親本:「小説新潮 第六巻第五号」
   1952(昭和27)年4月1日発行
初出:「小説新潮 第六巻第五号」
   1952(昭和27)年4月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:松永正敏
2006年5月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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