はそれだけだった。
虎之介は新十郎のタドタドしい捜査方針が甚しくあきたりないらしく、
「重二郎の妾宅なんぞでムダのやりとりをしなくッたッて、心眼で、ピタリ。話はハッキリしているなア。重二郎は市川の別荘で殺されてるよ」
「えッ。あなたはそう思いますか」
「そうさ。向島の寮をでて市川の別荘へ向い、あとの行方が知れないとあれば、市川の別荘で殺されたのさ」
「殺したのは?」
「コマ五郎さ。山キの血統を根絶やしにして一味の隠し子をたてようてえ寸法だが、ここに恐しいオトシアナがあるのだよ。余計なところにグズグズと手間どってると、山キの血統が根絶やしになる」
「ですが、コマ五郎は牢屋にいるじゃアありませんか」
「ハテサテ、衰えたものだア! 紳士探偵の評判が泣くなア。コマ五郎が落ちつき払って腕を後にまわした図太い様子をなんと見る? このタクラミを捉える心眼がなくて、どうするのだえ。コマ五郎には多勢の一味があるよ。土佐八も波三郎もおれば、その他多数の決して口をわらない輩下の命知らずもいるよ。犯人は牢屋にありと安心させて、山キの血統を根絶やしにする。するてえと、牢屋のコマ五郎が無罪だという結着まで出てく
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