かという想像によるのであった。すべては想像で、確証はない。
警察がこれを探り当てたのは、船頭舟久によるのである。舟久はすすんで秘密をうちあけて、
「私がこんなことを打ち開けるのは、先代のコマ五郎にカリがあるからでさア。先代には恩義をうけましたなア。キップのいい男だった。恩人が隠したがっていたことを打ち開けるのは悪いようだが、今となっては、そうではありますまい。あの時は隠す必要があったが、今はそうじゃないねえ。放ッときゃア、誰か悪党が山キの子孫を根だやしにして、山キの屋台骨を乗ッとるか、叩きつぶすかしようてえ悪企みがあるところが、山キには、世に隠れた子孫があって、これにコマ五郎の息がかかっているてえことが世に現れてごらんな。悪企みをやってるのがどこの悪党だか知れないが、これが世に現れると、コマ五郎が相手じゃアちょッと山キを叩きつぶすのは容易じゃない、やめとこう、ということに気がつきやしないかねえ」
これが舟久が秘密を打ちあけた言い分であった。この舟久はすでに八十に手のとどいた老人で、先代のコマ五郎という人物が生きていれば、ちょうどこの年配に当るのかも知れない。
だが、舟久がこう云っ
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