身で次々に死ぬ。それもみんな母方の体質に欠点があるせいだ、と喜兵衛がもらしたというので、鍵タから厳重抗議の使者が立ち、一時両者の間は甚だ険悪なものがあった。
もっとも受身の喜兵衛の方には特に含むべきイワレはないのだが、人の盛運は健康の中にあると云われるように、たしかに当主が病弱だった鍵タは日とともに衰運に傾き、破産に瀕するところまで来ているらしい内情であった。家運の傾いたアセリから特にヒガミも生れたのであろう。したがって、喜兵衛の方はインネンをつけられて愉快な筈はないが、先方のヒガミに同情できる気持もあって、亡妻の生家に対する一応の礼は欠かさない。それがまた鍵タのヒガミをそそりたてて、小さな根から大きな怒り恨みを結ばせ、内攻させていたのであった。
しかし、もしも清作親子四人が全滅したとすれば、実質上の利得をうる者は重二郎であろう。なぜなら、彼の実子たる二人は主家の外孫で、それが主家の後嗣《あとつぎ》の最も有力な候補者であろうからである。
この疑いは当然誰の頭にも起ることであったから、彼の身辺は最も深く当局の洗うところとなったが、彼が秋田からヘップリコを取りよせたような時間もツテも
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