終ったのであった。
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この出来事の裏に犯罪がありとすれば由々しい大事であるから、新十郎は根掘り葉掘り問いただすことを忘れなかったが、いかんせん二人の観察は時日も浅く、特に陰謀者と目すべき側の動静については、ほとんど個人的なツナガリも観察の機会も持たないのだ。
「お話はよく分りましたが、私がただちに申上げることができるような結論はまだ何一ツありません。だが、とにかく、三本指の変死人がロッテナム夫人の扉ボーイの黒ン坊だった男かどうか、時日のすこしも早いうち、ただ今から確かめに急ぐと致しましょう」
ただちに馬車にのって警察を訪ね、仮埋葬の死人を見せてもらうと、黒白の相違もあって人相では一切判断できないが、身体の大きさは同じぐらいだし、着ている服はたしかにその黒人の着ていたものに相違ないと云う。
見たところ、死後に日数を経た死体ではないようだ。杭にかかっていたというが、その状況をよく訊き正してみると、射殺されて水中へ落ちた時に杭にかかったもので、流れてきて杭にかかったものではないようであった。
昨日の朝の発見であるが、その前夜から夜明けまでのうちに殺されたもの
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