の目にいやらしい蛇のようにハッキリとしみついているのは、そこに謎をとく何かがあるという神様のお告げのようにも思われて……」
と、こう云って、さすがに克子も顔をあからめたが、良人はそれをさえぎって、
「イヤ、イヤ。羞しがらずに、なんでも思いついていることを言い切らなければいけない。人様に云うと笑われそうな、神様だの先祖のお告げかも知れないと思うようなとりとめもない神秘的な暗示や思いつきなどに、案外にも正しいカンが作用しているかも知れないよ。その方がこの目でシカと見たことよりも時には正しい真相を見破っていることがある」
こう云って、通太郎は妻をはげました。かくて二人はいろいろの疑問を提出して考え合ったが、宗久の幻想の由来はどうしても見当がつかない。そして二人は多くの疑問を残して寝についたが、その翌朝の目がさめたとき、克子の頭にフッと浮かんだことがあった。
「そうだッけ。ゆうべはあのナゼ? を思いだそうとしても分らなかったのに、それがこれほど単純な事実だったのは、フシギなほどだ。これに関聯したことはみんな思いだしていたのに、このことだけがどうして思いだせなかったのかしら」
思いだしてみ
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