け。幾之進も三次郎もやや御酩酊である。
オヒラキのあとではお紺に金三の両ツンボが酔いつぶれ、お吉アンマもヘドを吐いて暫時ねこむていたらくであった。
ところで、翌朝のことである。
酔ったおかげで早々と目のさめたお紺が、別宅の新郎、新婦のお目ざめの様子を見て、まだモーローといたんで霞む頭をもてあましながら、別宅の台所へやってきた。新宅の台所で新鮮なお茶を立ててあげようというダンドリである。この台所を使うのははじめてだが、板をあげると下に薪があるはず。そう考えて、板をあげた。
お紺は仰天して腰をぬかし、やがて十羽のアヒルがほえたてるようなオシの大騒音が起った。
人々が台所へかけつけてみると、お紺は喚きつつ腰をぬかしている。板を二枚あげかけて一枚は下へ落したが、中に見えるのは朱にそまった死体であった。
床の板をあげてみると、死んでいるのは二人である。鋭利な刃物で三四ヶ所刺しぬかれて血の海の中にことぎれている。
しらべてみると、お紺の父の三休と兄の五忘ではないか。まさに密室殺人とはこのことで、下の物置は四囲をぬりかためて、出ることも、はいることもできない。
しかも物置の内部だけが
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