の当りはついた。ただ問題は島田幾之進であるが、平戸久作が山本定信にそむいて葉子を三次郎にめあわすとすれば、島田は山本と対立しうる実力者であるに相違ない。
 するてえと、蛸入道とガマ坊主は何を目当てにたくらんでいるのであろうか。
 島田一族という奴は、とにかく薄気味わるい怪物ぞろいだ。おまけにニセツンボは山本定信の廻し者に見破られている。あるいは島田一族にもとっくに見破られているかも知れない。
 しかし、ベク助とても悪党の筋が一本通っている点では人後に落ちない曲者だから、みんな見破られているようだと分っていても、よろしい、一そうやってやれという不逞な根性が鎌首をもたげるのである。
 五忘の奴にたのまれた約束なんぞというチャチな問題ではなかった。敵を大曲者と知り、見破られたと知る故に、敢て五忘の註文通り縁の下から通じる道を立派にしとげて怪物どもの鼻をあかしてやろうと決意をかたくした。
 そこでベク助は普請に精魂を傾けた。一手に大工も左官も屋根屋もやる。九月上旬からかかって十二月の半ばに八畳と四畳半と三畳に台所をつけた小さな別宅が完成した。一人で仕上げたにしてはたしかに見事な出来。ところが台
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