方というのは十七八、すごい別ピンさんで、全然水商売の女じゃありませんとも。芸者? とんでもない。それどころか、女の方はヤソ教の信者ですとさ。教会へ行くのを口実にアイビキなんですとさ。チャッカリしてますよ。当節のハイカラさんはね。いいえ、二人が連れだっていらしたことはございません」
聞く重太郎は奈落へおちる如くである。三枝子とオソノは毎週の日曜に教会へ行くことができないから、代り番こに、隔週の日曜に教会へ行く。彼女ら二人揃っては行かれないのだし、重太郎も近ごろはもう教会へ行かれないほど毎日が多忙であった。三枝子が教会へ通う前後の行動は誰にも分らないのだ。
実に何たる事か。井戸に細工を施したのは二人組の男と判って妹の無実を明かにする日は近づけりと思っていたのに、妹が無実どころか、由也のアイビキの相手らしいとは。さすれば由也にカラクリを施した形跡があっても、その企みの相棒の中には三枝子も含まれているであろう。井戸の中からその屍体が出ないも道理。由也としめし合せてどこかに隠れているのであろうか。さすがの重太郎も、ここに至ってにわかにガッカリしてしまい、
「こうなっては、もうダメです。わが妹
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