えを置いてるが、その抱えのヤッコという妓のナジミの大学生というのが、どうも由也のようだ。ヤッコと仲よしで、若い妓の中で土地一番の美形という小仙という妓にお金持の大学生がついてるというが、これはたしかに時田らしい。その時田に連れられてきた由也が色里の味を覚え、ヤッコとなじんだのが去年の暮らしく、彼は時田のように遊ぶ金が自由にならないから、一品二品と家から何か持ってきてヤッコに入質してもらう。ムカデの何とかという天下に隠れもない名題《なだい》の茶器に至って、質屋も後のセンギを怖れてか届け出たが、実はそれ以前にも相当な品物が同一の手からかなり度重って入質されていたのであった。
 遠山と重太郎が搦め手をきゝまわり、三日間かゝって、これだけのことを調べあげた。あとは張りこんで時田や由也の遊ぶ現場を見届ける一手と、相当な収穫に喜んでいったん報告のために署へでると、佐々警部補が彼の顔を見るなり、
「オイ。どこでウロウロしているのだ。浅草の質屋からまた報告があって、例の天下名題の茶器は質入れの当人がうけだしているじゃないか。受けだしたのは、私がお前に調査を命じたその日の夜のことだ。今まで何をボヤボヤし
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