明治開化 安吾捕物
その十 冷笑鬼
坂口安吾
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仰有《おっしゃ》るようなら
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)千円|算《かぞ》えて
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\と
−−
「隣家に奉公中は御親切にしていただきましたが、本日限りヒマをいただいて明朝帰国いたしますので……」
と、隣家の馬丁の倉三が大原草雪のところへ挨拶に上ると、物好きでヒマ人の草雪はかねてそれを待ちかねていたことだから、
「この淋しい土地に住んでお前のような話相手に去られては先の退屈が思いやられるな。今夕は名残りを惜しんで一パイやろうと、先程から家内にも酒肴の用意を命じてお待ちしていたところだから、さア、さア、おあがんなさい。水野さんのところへは家内にこの由をお伝えしてお許しを得てあげるから。ナニ、水野さんが面倒なことを仰有《おっしゃ》るようなら、今夜は私のところへ一泊して明朝たちなさい」
「イエ、二日前にヒマをいただいて一昨日から奉公人ではございませんから、今夜はお許しをいただかなくても
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