、切支丹でもあったと云われているのですよ」
 田舎通人はニヤリと笑って、
「それじゃア私は隠し物は切支丹の祭具と見るね。金箱だという説は誰しもいい加減に思いつく空想だが、切支丹てえのは、しかるべき達人のニラミがないと見破れない」
 虎之介はこれをきいて呵々大笑。
「何年たっても半可通の頭だねえ。系図の文句を読み落さないように気をつけることだ。当家大明神大女神也とあるのはどうだ」
「それは即ち当家切支丹の開祖大女神ということさ」
「ハッハ。このウチには切支丹らしいものが何一ツないじゃないか。デクノボーめ」
 すべてを調べ終って、千代をよびだした。千代は蒼ざめて力のない様子である。新十郎はイスをすすめて、
「あなたがお茶をいれたのはマチガイありませんね」
「ハイ」
「お茶をいれて、それを二階に持って行く時刻はあなたがはかったのですか」
「いいえ。その指図は宇礼さんです。宇礼さんもミコですから、神の霊がのりうつッて、時刻がお分りなのやら、私たちの前にピッタリお坐りで、一々指図なさるのでした」
「ときに、あなたは、碁がお強いそうですねえ」
「イイエ」
「御ケンソンはいけませんね。初段格はおうち
前へ 次へ
全67ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング