りでなく、みんな志呂足の信者であった。
これをきいて天鬼は笑い、
「おいでなすッたな。何かやるだろうとは思っていたよ。イヤ、面白い、アッハッハ。津右衛門殿の霊が現れるか。何を言わせるツモリだろうな。何を言わせるにしても大きにタノシミのある話だ」
津右衛門の霊が何を言っても天鬼にカカワリのないことだから、彼は甚だクッタクがないが、当事者には薄気味わるい話である。ひょッとすると、千代に一服盛り殺されたというようなことを言わせかねない。
「まア、まア、心配するな。霊魂をよぶなどと云ってどんなことを告げさせるにしても、オレがみんな化けの皮をはいでみせる。それよりも困ったことは、東太と宇礼の結婚だな。うまいことを考えおったな」
東太を自分のムコにしてしまえば、あとは野となれ山となれ、すでに同族親類で、バラリがうまくいかなくともまたゴマカシもきくし、強いてインネンもつけにくくなる。
それに天鬼が今もって甚しく気がかりなのは、たしかにこの邸内に隠してあるに相違ない伝説の金箱であった。もはや志呂足の企みには、その伝説の金箱が含まれているのではあるまいか。近在の者には知れわたっている伝説なのであ
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